IT活用し最新の防護層設計
衛星や宇宙ステーションの軌道に浮遊する宇宙のごみは、「スペースデブリ」と呼ばれ、小惑星や彗星(すいせい)が出す塵もこれに含まれる。地球から200~500キロメートル上空の低軌道上を秒速7・8キロメートル前後(マッハ20超)のスピードで移動しているが、直径10センチメートル以上のデブリは地上から光学望遠鏡とレーダーで追跡し、その軌道を特定したデータベースが作成されている。デブリとの衝突の危険性が生じた場合、衛星機が回避行動をとる仕組みになっている。
直径1センチ以下のデブリとなると、地上からの観測や軌道の追跡は困難になるため、国際宇宙ステーションなどを物理的に防護する技術が必要になる。具体的には、「ウイップルバンパー」と呼ばれる防護層で宇宙機の外側を覆う方法が取られている。しかし、有人機衛星は大きな構造物なので、防護層を厚くすると、打ち上げに膨大なエネルギーがかかってしまう。最小限の防護層で最大限の防御効果を出すために最先端のITが活用されている。
地球上で、超高速のデブリ衝突を再現することは困難なことから、数値解析技術を使い、論理実験をコンピューターの中で繰り返し、最適な防護層の構造や強度を計算しているわけだ。常識を越える高速度の衝突では、衝突速度がある値よりも高速になると破砕、液化、気化のため、衝撃が弱くなるという結果もある。
こうした解析で得られた数値を元に、日本の有人宇宙ステーションには最新の防護層が取り付けられている。ウイップルバンパーよりも多層の強化型防護システムで、スペースデブリの衝突が本体に影響を与えないようになっている。
今後は、有人衛星機だけでなく、無人衛星機にも取り付けられるよう研究開発が進んでいる。
(科学システム事業部 片山雅英)
- ※ このコンテンツは2008年7月24日にフジサンケイビジネスアイ紙に掲載しました。